愛の奥宮殿へ  

chapter 16

〜 魅惑の一日 〜



「はい、あとはこれをかぶって。」
「・・・・・・・」
「うん♪ とっても綺麗にできたわよメンフィス♪」
「・・・・・」

今朝ほどからエジプト王宮では一種異様な緊張感がみなぎっていた。
かれこれ何年前からだろう?
この妙な行事がはじまったのは・・・・

「・・・誠にこれが魔除けに効くのか?」
「そりゃあもう♪ 神様がね、ご覧になるととっても喜ぶのよ。」
「そなたの生まれし神々の国の風習は良く分からぬことが多いな・・・・」
「ほら、そんな仏頂面しないで。あ、まって、冠がちょっとまがってるわ。」

いそいそとキャロルはメンフィスの頭上に載っている冠をなおした。
それは色とりどりの花を編みこんだ華麗な『花冠』だ。
美貌の面にはさらに色目の際立つアイラインに頬紅・・・口紅・・・・その身にひるがえる綺羅綾、甘い香水・・・

見る者全てが硬直するような、恐るべき姿がそこにあった。

「ホント・・・・メンフィスって完璧な『美女』になるから凄いわよね」
「・・・ふんっ」
「ねぇ、せっかくだからもうちょっと笑ってくれると嬉しいんだけど・・」
「こんな恰好で笑えるか。・・大体、何かあったときこれでは外を歩けぬわ!」
「・・・・誠に・・・拷問にございまするぞ。」
「まぁ、ミヌーエ将軍も素敵にできたじゃない♪」
「・・・・・・」
「結い上げるとまた感じが違ってエレガントねぇ(^^)」
「王妃様・・・」

きゃぁきゃぁと色めく女性陣。
周囲の男性をかたっぱしから花や化粧で飾りたてている。

なんでも・・・王妃曰く、今日は『女装の日』ということらしいのだ。
髪に花を挿す程度でもよいらしいのだか、完璧に女装をするほうが『厄除け』の効果が増すということで、メンフィスにいたっては頭のてっぺんから指先、つま先まで、王妃の指示のもとありとあらゆる変身作業が施されていた。

側近のミヌーエもなんだかんだと理由をつけて逃げようとしたのだが無駄だった。
侍女たちに取り囲まれ、同じく盛大に被害(?)にあっている。
立ち居振る舞いはいかついながらも出来上がったその姿はそれなりにさまになっていて面白い。

ルカ・ウナスもため息モードでかわいい美少女(微少女?)と成り果てていた。


「毎回思うけど・・・カメラがあったら写真で残しておきたいぐらいだわ・・」


最初はほんの冗談のつもりで口走ったのだけど・・
ま、楽しいお遊びだし・・いいわよね。


こっそり微笑む王妃キャロル
本日は4月1日
実はちょっぴりいたずらな『エイプリル・フール』の年中行事なのでした。






Fin.





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