chapter 17
〜 変 化 〜
ミヌーエ将軍の微笑
「何をしておる、早くまいれ」
「あ、はい。」
遅くなってごめんなさい・・と、そう仰りながら、若き王妃は振り返った王の隣に走り寄った。
自然に差し出される王の左腕
立ち止まって待つその腕に王妃の指がからまった。
あるべき場所にその繊手がおさまると、王はまた前方を見据えて歩き出す。
そのファラオの歩幅がそれまでと違い少しゆるむのに気づく者がどれほどいるだろうか?
隣の小柄な王妃がどうしても早足気味に見えるので、そうとはあまり分からないのだが・・
あの歩幅にわたしはとても嬉しくなる。
冷たく堅い鋼(はがね)でしかなかったあの方がたどりついた柔軟さ
愛するものがあってはじめて生まれた心の動き
鋭利なだけでは砕けやすい
この世に生を受けられてから・・・ひたすら前に・・果てなく続く茨の王座をただ一人で歩き続けなければならない過酷な運命に置かれたあの方が、やっとふり返ることができる柔らかな光をその手に握られたのだ。
「ふふっ」
「・・・・なんだ?」
「ううん。何でもないわ。」
「・・・・なにをずっとニヤニヤと笑っておるのだ・・変なヤツだな」
王妃は気づいている
王が自分の歩幅に歩みをあわせていることを。
婚儀が終わってからほんの数日
これは実は相当劇的な変化だったのだが・・・
王自身・・キャロル様への愛しさのあまり、ご自身の行動の変化に気づいておられないのかもしれない。。
愛する心・・・
王がその手に得たものは正に神の恩恵
Fin.
愛の奥宮殿へ