chapter 24
〜 小箱 〜
(ある王宮侍女の手記)
カツ・カツ・カツ・カツ・・・・
足早に王が目の前を通り過ぎてゆかれる
あわてて脇へ控えて頭を垂れ、足音の遠ざかるのを待ってその行く先をそっと目で追いました。
昼餉を終えて、次の国事に向かわれるその優美な後ろ姿。
いつもの通りでいらっしゃいましたが、ただ・・なにか違う・・・。
「・・・・」
その左手に、小さな小箱をお持ちでいらっしゃったので。
王が持つには不似合いな小さな小箱・・・
それを無造作に掴んでおられるのです。
何かを持ち運ぶことなどない王が、王杓以外に物を持ち歩いておられる事自体、不自然で目立つのですが・・。
なんといっても・・それが
白い小箱に・・赤いリボン・・・だったので
目に入ったのは一瞬のことでお顔もろくに拝せなかったのですが・・
と申しますか、王は普段、お怒りになられる以外はほとんど情を表にお出しにならないお方です。
きっといつも通りの綺麗過ぎる美貌に深遠の眼光を厳しくすえられていたことでしょうけれど・・・
とても・・
なんというかとても・・・
あのファラオの後ろ姿に、わたくしまで幸せな気分になったものでございます。
きっと・・・
小箱を受け取られるまでそれぞれにお心温まるやりとりがあって
そして王には・・・
あのふたをお開けになるまでのお楽しみもこれからおありで・・・
いつも凛として冷たく近寄りがたいあのお方も、そのときばかりはお顔を淡くほころばせられるのだろうかと・・
そんな事を思うと・・・
あの後ろ姿にお目にかかることができて・・・
・・・・とても・・・
・・幸運だったと思ったのでございます。
Fin.
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愛の奥宮殿へ