chapter 7
〜 楽しい食卓 〜
V
【お茶の時間の巻】
「テティ、それじゃないのですよ。こちらを。」
「え?ナフテラ様?そんな入れ物でいいんですか?」
「ええそうですよ。午後のお茶は必ずこれでおだしするようにしておくれ。」
「??????」
王妃さまの側近くにつかえて、はじめて国王夫妻の午後の休息の飲み物を出す役目をおおせつかったテティ。
緊張する手にのせられた見慣れぬ稚拙ともいえる茶器類にとても不思議な視線を投げていた。
「なんなのかしら・・・? これ・・・・・・????」
首をかしげながらも慎重な歩みで盆をはこぶ。
宮殿奥の庭にくつろぐファラオと王妃の姿が見えた。
なごやかに笑いあっているお二人・・きらきら輝いて・・・ああ・・なんて素敵な風景だろう・・・(ほうっっ)
ぼーっとみとれてしまっていた自分の姿をキャロルはふと目にとめた。
「あら・・ ああ!お茶を持ってきてくれたのね?テティ・・だったわね。」
「は、はいっ」
「ご苦労様。ちょうど喉がかわいていたところなの。どうもありがとう。」
「い、いえ。」
侍女に礼をいうなど、相変わらず気さくな王妃様だ
しかも王妃みずから飲み物を注ぎ、王に差し出している。
「はい。メンフィスのマグカップ♪」
どうやらどちらがどちらの専用かも決まっているらしい・・・。
側面に青空と太陽の絵がついているのが王の、
上がぎざぎざにとがった赤い模様のついているのが王妃のものらしい。
(注↑実は『チューリップ』・・・なのですが・・・P)
なかよく少々いびつなそれぞれの容器をカチンと当てあい、それを合図に口にする。
ちょっとしたことだが、このエジプトには馴染みがない。
おふたりのくせ・・というにも妙で、王妃の習慣をファラオが倣っているといった感じだ。
あとで聞いたのだが、あれは王妃がお手作りされた容器とのこと。
ふつうの杯よりも大きいのでたっぷりと飲み物がはいるのは当然だが、それ以上に王妃の温かいぬくもりも手にした両手いっぱいに感じられ、今やメンフィス王も他のものを使う気は起こらないそうだ。
「ね、おかわり飲む?」
嬉しそうにカップを王妃が手渡す度、あふれるほどの安らぎが王に注がれているのだという。
Fin.