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ライセンス



◆第2段階◆ 学科 「日常整備」 (教官 側近ルカ)

ザッ ザッ ・・・・

ある日、厩の一角で馬にブラシをかけているルカを見つけたキャロルは興味津津でその様子を見に奥へと入っていった。

「ふーっ、 ん? これは、姫君!こんな所へ、どうなさったのですか?今日の練習は終わられたのでしょう?」
「ええ。馬の手入れって大変そうね。ルカはいつも自分でやってあげているの?」
「ああ、はい。これだけは欠かさず。私にとって大切な足ですから。いつでも走れるよう整備はしています。」

(・・・・・いつでも、貴方様を王子のもとまでお連れすることが出来るように。)

ルカの心中は相変わらず王子一筋である。
この無邪気でやさしい姫君をなんとしても我が主君の花嫁にしてさしあげたい。

「わたしもやってみたいなぁ」
「は?」
「ねぇ、そのブラシもう1個ないかしら?わたしも『シシィ号』にブラシをかけてあげたいわ。毎日乗せて貰っているんだもの。こんなヘタクソなわたしを振り落としもしないでずっと付き合ってくれているのよ。わたしだってちゃんとお礼がしたいのよ。」

―――『グラン・パドゥドゥ・シシィ号』それはキャロルの現在の愛馬の名前だ。(もちろんキャロルが名づけたことは言うまでもない。)
とにかく気性がおっとりしていること、短気でなく、しかも辛抱強いことを条件に、メンフィス自身が選び出したメディア産の最高の白馬である。
もともとの調教状態も良好だったが、どんなキャロルの奇想天外な行動にも動じずに主人をたてているという点では、馬ながらになかなか見所のある性格をしている雌馬だ。おかげで1ヶ月たった今、キャロルの闊歩する姿も何とかさまになってきている。

「・・・じゃあ、上から毛並みに合わせて引き落としてください。」
「う・・・結構重いのね・・・う〜んしょっ・・・・っと」

馬が苦笑するとすれば、この時のシシィ号は正にそれだろう。
賢そうなおとなしい瞳が、後ろで奮闘する毛色の変わった主人(?)の様子を振り返っている。
毛を梳いているというより、ぶら下がられているようなものだ。
少し不機嫌そうな様子に、ポンとたてがみをたたき、こっそりルカは呟いた。

「シシィ号、すまんが付き合って差し上げてくれ。あとでちゃんと綺麗に梳きなおしてやるから・・・」
ブルルル・・・・っっ
「あら?喜んでくれているのかしら?ふふふっ気持ちいい?シシィ号?」

返答に困った1頭と1人は視線を見合わせ肩をすくめた。




2001年 「ししぃの館」投稿作品





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