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特 技




「わぁ!すごいわ!綺麗♪」
「どういたしまして。」

感嘆の声にさらりと極上の微笑で答えて手の中の花束が渡される。
小さな野の花でつくられた、可愛らしいブーケだ。

受け取る側も渡す側も、別段普段通りではあるが、
(花束を受け取った側の喜びも、渡す側の満足度もそれなりにはあるが)
この二人をとり囲んでいた十数人は、その時本人たち以上に驚愕の目を剥いた。

「なっ!!ど、どうされたんです?今?」
「は、花が・・・・・花がっ・・・!!!」

硬直している侍女達と同じく、声を失ったのは隣に座して見ていたこの国の王もであった。

「・・・・・・っ!!!」

「? どうしたの?メンフィス?」

食い入るように妃の手の中にある花束と、それを渡した人物の手元を交互に凝視する。
まさに今フリーズ状況で、目の前で起こった事を論理的に理解しようとしてみたが失敗したといった所か。


「今・・・何をされたのだ?義兄上殿」

「!・・ああ、 ・・・・ま、不思議だろうね。初めて見たら。(くすっ)」


蜂蜜色に輝く金髪を緩やかに揺らしてロディは微笑んだ。
そしておもむろにメンフィスの前に近寄り、さらりと空の両手を交叉する。

「じゃ、王様にもおすそ分けを。」

交叉を解いた瞬間、ポンっと指先から小さな一輪の花が現れた。

「はい、どうぞ(にこっ)」
「・・・・・・・」

人差し指と親指でつままれた可愛い一輪を王に差し出す。
妃の目の前でされた先ほどと同じく、何もない空中からふっと飛び出したその花に、やはり驚きの目のまま硬直 は解けず、差し出されたその一輪を惰性でメンフィスは受け取ってしまった(人差し指と親指で)。
そして、そのままその何の変哲もない野の花を凝視する。

・・・よくよく考えてみるまでもないが、この二人がこうして花を(ちまっと)受渡しするとなんとも似つかわしくないメルヘンな光景だった。

「神様のハンドパワーだよ♪(ばらばらと花を出して見せる)」
「に、兄さん!!だめよだめよ!みんな本気にしちゃうからっ!!これはマジックっていってね・・・ちょっと兄さん、何まだ遊んでるのよ!!ストップ、ストップってば〜っっ!!」

その後、目の錯覚とか、手品のタネとかいう事を散々必至にキャロル王妃は説明をしてまわったのだが、(異様に)器用な兄の特技の実演は「神の御業」と認識され、あっという間にオリエント世界に噂が広まったとか・・?


Fin.



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