王家の谷へ

― 報告書 −
と言う名の Love Letter

  メンフィスへ       
今日キプロスから使者が来ました。
交易の際の中継拠点を新しい軍港近くに持ちたいとのことです。
ミノアとトロイ方面からも同じような内容の書状が届いています。
他にも随分たくさんの周辺諸国から、貢物を積んだ船舶がテーベ河岸に着岸してきているけれど、それはメンフィスが帰ってきてから荷揚げするということで、今は一時待機させています。
メンフィスが出かけてすぐあと、たて続けに押し寄せているような感じだわ。よりにもよって。
あ、わたしは大丈夫。心配しないで。ちゃんと王妃様としてがんばっているから。
(・・・今、顔をしかめたでしょう?わかってるんだから。)

それから、イムホテップが直接使者たちと個別に対談をしたところによると、ヒッタイト側の様子が少しおかしいそうよ。内乱が起きるかもしれないって・・・。
まだ憶測だけで判断は微妙なのだけど、軍の統率に以前ほどの統一性がなくて、押さえつけられていた属国も動き出しているようなの。
王と王子の関係がひどく悪化してきている為ではないかとのことなのだけど・・・。
(私が見たところでも、以前からあまり仲がいいようには感じなかったから)
このところの外国からの使者が増加したのもそのあたりが大きく影響しているみたい。

一緒にミノアとトロイの書状の写しを同封します。

あと、ミノス王から例の「春の祭典」の招待状を又いただいたけれど、ちゃんとその場でお断りしました。
安心して。もう勝手な約束はしないから。
そういえば、今度ミノアの最速船を1隻、軍港の開港祝いにくださるそうよ。
ユクタス将軍が胸をはって「私がおとどけします」って言っていたから。また来月もいらっしゃるわね。

取り急ぎ現状の報告は以上です。


すこしでも・・・・・はやく帰ってきてね。
あなたのいない宮殿は昼も夜も静かすぎて・・・やっぱり少し心細くて寂しい。
ほんの2日貴方の顔を見ないだけで、1年以上もあっていないような気がするわ。

あなたの胸の中で眠りたい。

予定では明日の夕刻だったわよね。
あと1日・・・・
今から早馬を出すから、これが届くのはきっと明日の朝かしら。


おはよう。
今日も貴方に幸運の恵みがあふれますように。
愛しているわ だれよりも貴方を―――



キャロル








王家の谷へ

© PLEIADES PALACE