王家の谷へ

午 睡



ふわりとした裾がやわらかくひろがる
椰子の濃く茂る木陰の下
木にもたれて瞳を閉じる

さやさや・・
ざわざわ・・

ゆるやかに おだやかに 
涼やかに 軽やかに
空から降りてくる緑の奏でる小さな音楽

見つかったら叱られるのは分かっているけれど
わたしはここが大好きなの

ほんの少しだけでいい
ただの娘に戻りたい時もあるから・・・・



ああ・・・
向こうで呼び声が聞こえる
もう行かなきゃならないの?
いいえ。まだ午後の休みの時間のはずだもの・・・
――大丈夫よ。もうちょっとだけ・・・こうしていたい。


うとうととしながら風の音を聞いていた
裸足の足に木々の間を通り抜けたそよ風が触れていく
無造作に脱ぎ捨てたサンダル
いつだったか・・ 小さい頃もこんな風に庭の片隅にお気に入りの場所があった。
大きな木と緑の芝生・・生垣に隠れて大人の目から逃れるのに丁度いい秘密の一角
アメリカのあの庭は・・・今はどうなっているかしら?


「やはりここにいたか・・・・」


ゆっくりと薄く目をあける

背中に木漏れ日を背負ったシルエット
眩しくてよく見えないけれどわかるわ
貴方笑っているんでしょう?


しかたのないやつ・・と


すとんと隣に腰を下ろし、当然のようにわたしの膝を陣取るのよね
しかたのないのはどっちよ
ねえ、そんなに幸せそうに寝ちゃわないでよ
ここはわたしの見つけたお昼寝場所なのよ
その敷布はわたしが使おうと思ってわざわざ持ってきたのよ

もう・・・・・



ときおり寝返りを打ちながら・・貴方がわたしの膝を抱くんだもの

ひどいわ
これじゃあ眠ろうと思っても眠れないじゃない



木漏れ日にとける貴方の寝顔に釘付けで・・・・







Fin.


            王家の谷へ   みんみんまま様作・続編「午睡 once upon a time」

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