王家の谷へ
Presented by みんみんまま様
そなたは未来永劫・・・
舞う―――
――――飛ぶ―――――跳ねる
―――躍る―――
そして歌い奏で―――語り合う―――見つめ合う・・・・
魂の祝宴
祝福されたこの世の西方
愛されるべき―――――愛する者たちの楽園
その・・・・恋人たちが誘われ―――求め合う
その美しき場所にて・・・
――――いた。見つけたぞ。
これからは真実、わたしはそなたのもの。そなたはわたしのもの。
けっして離さぬ――――
魂の半身
自らを神と呼ぶものの半身
そして求められた彼の半身は
二つの美しき心はいっそ一つになるほどの力にて寄り添いあう
ひたむきに・・・
切なげに・・・・
その数瞬、前のこと
未明―――まだ夜の神が力を抱きつつ交代の時刻を迫られる頃
「ファラオ、ご崩御にございます」
慟哭の波にのまれつつも時は移ろう―――
西方に呼ばれし、彼は彷徨う
愛しき魂を・・・半身を求めて・・・・・
魂に時はない
駆ける―――――駆ける―――――駆ける・・・
ふと、耳に・・・
「?・・・・呼んだか?わたしを・・・」
捜す――――見つけた
それは明るい日差しの中
緑の芝生。
彼には見慣れぬ、眩く映えるその屋敷の庭園にて
少女が――――何よりも明るく光を映し出すその優しき存在
花を摘んでいる。何かを口ずさみつつ。
手にもち、その青き瞳に白の花を反射させている。
「お嬢様――?どちらですか??」
「あっ・・・」
膝をついていたのを立ち上がる。
裾が広がる―――柔らかな蕾が咲き開くかのように
走る―――走る
髪が流れ、それにまだ未練を残すかのように光が纏い付く
「!」
人がいる?こんな処に見知らぬ人が・・・・あぁ、でも・・・?
「マントの中に隠してくれる?」
言いながら既に少女はその人の肩衣の中に潜り込む
少し目を見張ったその人は――――笑みをこぼす
・ ・・まったくそなたは変わらぬのう・・・・
「呼ばれておったぞ。行かぬでもよいのか?」
「いいの!まだお外にいたいんだもん」
少女はこの長身の人物を知らない。その見慣れぬ装束も。
それでも―――
「だぁれ?」
「会いにきたのだ。そなたに―――会いたかったぞ」
青い瞳を燦として輝かす少女に手を伸ばす。
「捕まえたぞ。よいな・・・」
抱きしめ、額に唇をあてる。
それは刻印・・・己がものの印。
刻まれた少女は目を見張りつつも自分が何をされたのか・・・気づかない・・・
それは少女の時が満ちたときに呼ばれる印。
与える愛の証。
少女に言う。
「時が満ちたら・・・また会おうぞ」
そして彼は掻き消えた――――
なんの余韻も残さずに・・・・
彼はまた彷徨う―――
今度は己を待つ魂の元へ。
駆け走る。
待たせるのは辛い。会えないのは辛い。
あぁ・・早く速くとわが身を叱咤しつつ・・・・
そして見つける・・・抱きしめ、寄り添い、口付ける
これからは真実、わたしはそなたのもの。そなたはわたしのもの。
けっして離さぬ――――
わたしはそなたに縛をかけた――――
未来永劫わたしのもとにあるように―――――
少女は朗らかに家族に話す。
「私ね、大きくなったらエジプト考古学の勉強をしたいの―――」
Fin.
王家の谷へ