王家の谷へ
ガラスの靴
ガラスの靴を置き去りにしてしまったサンドリヨン
彼女はきっと本当の気持ちをそこに置き去りにしてしまったの
本当は・・あのまま踊り続けていたかったのに
真実を告げる鐘が鳴る
まといつく全てを引き剥がして
無残に惨めな自分があらわれた
気づかなかった事への裁きのように
「愛していた」という心のかけらだけを残して
遠い海の向こうから
貴方がどこまでも追いかけてくる
わたしの残したガラスの靴
貴方の心の階段に置き去りにしたガラスの靴
それをたずさえて
貴方が私を追いかけてくる
どこまでも どこまでも・・・・
どうして・・なの?
呼び寄せるのはこの胸のなかのガラスの靴のせい?
片割れを持つ貴方を
貴方が好きだと叫んでいる
たった今気がついたの
貴方がこんなに好きだということに
死んではいやよ・・
無情に響く宣告に
心にまとった虚勢が消える
・・貴方が好きだと叫んでいる
12時の鐘が鳴り響く
闇の中の舞踏会
ひたたり落ちる氷の針が
真夜中の洞窟に暗く冷たく凍りつく
心の衣装は意地と嘘でかためた紛い物
どんなに装うとも真実はおまえのおろかさを嘲笑う
残されたのはガラスの靴
気づかずに・・片方をはるか遠い彼の地に落としてしまった
たった一つ残された本当の気持ち
貴方はそれを拾い上げてくれた
二度と会えないかもしれないのに
消えたわたしを探しだすという
今でもそれは変わらないの?
後悔はしていないの?
差し伸べられた長い指
どれほど望んでももう届かない
瞳を閉じれば貴方が見えるのに
こんなにはっきりと貴方が見えるのに
わたしはおろかなサンドリヨン
自分の気持ちも分からずに貴方とずっと踊っていたの
わたしは貴方を愛していたわ・・
貴方が無事なら
誰も知らなくてもいい
貴方が生きていてくれるなら
誰も気づかなくてもいい
このままこの身が消えはてても・・
生きて・・・貴方がわたしのガラスの靴を覚えていてくれるなら・・・・
それだけでいい・・
Fin.
王家の谷へ
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