王家の谷へ
望 み
そうね・・・・・例えば・・・
お気に入りの椅子に座って
ちいさな花を一輪窓辺に飾るでしょう。
それから・・・
のんびりと木の葉のゆれる音を聞いて
ながれる雲をぼんやり追うとか。。
そんな時間がたくさんあればいいなと思うわ。
涼しい水辺ですごすのもいいわね。
水鳥たちの羽ばたきを眺めて。
穏やかな風にふんわりとたゆたっていたり。
なあに?変な顔して。
そうかしら?
・・・・・別につまらなくなんかないわよ。
―――いつも・・貴方が側にいてくれるから。
ほら、一緒にこうしてお茶を飲んだり
おしゃべりしたり。。。
まぶたに木漏れ日を感じながらお昼ねしたりするのって気持ちが良いじゃない。
ね♪。
ふふっそうでしょう?よかった。貴方も同じで。
え?!
あんっ、ふ、普通のお昼ねよ。
違うってば!そうじゃなくって
きゃ〜っっ
だからね・・・
誰もがこんな時を過ごすことができる
誰もが自由に・・・好きな人と一緒に好きなことができる
平穏で
優しい・・・
わたしの理想はそういう世界よ。
**************
午後の休息の時に、くつろぎながら目の前の妃にふと「今の望み」を聞いてみた。
気に入りの飲み物を飲みながら小首をかしげる。
じっと何かを考え込むようにして
「そうねぇ・・・」
追加の飲み物を私の杯に注ぎだした。
静かに卓上の杯がコポコポと満たされていく沈黙ののち
口の端からようやくつぶやくように語られた望みは・・
・・・なんとも平平凡凡な・・いつもの日常だった。
風にふかれ
空をみあげ
ゆるりと過ごす・・・
―――そんなことは
・・・今、そなたがしていることとなんらかわりはないではないか。
つまらなくなって、そなたのひざの上にごろりと寝そべった。
額にふわりとやわらかな陰が落ちる
そなたが手をすべらせて頬にかかる髪を撫で付けていた。
片目だけ開けて薄く様子を見上げれば
なにが嬉しいのか笑っている。
「・・・・・・」
そうだな。
こんな時間がたくさんあればよい。
そなたの言うとおりだ。
そなたがいつでも側にあるならば・・
いつもこうして この手の中で愛することができるなら
それ以上に幸せな時はないだろう――――。
Fin.
王家の谷へ
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