夜明け前
愛している・・・・愛しているキャロル
何度そなたにささやけばわが心が伝えられるのだろう・・・
いとしくてたまらぬ―――
なんと柔らかなこの素肌・・・・
くだけ折れそうな細き腰・・・・
我が腕を・・・胸を・・すべてを包み込みわたりゆく金の海原―――
すべてが幻のごとく夢の中のできごとではあるまいか
この喜びを信じてもよいのか・・・・
おおキャロル・・・
キャロルよ―――
愛していると・・もう一度その口から言ってくれ
二度と離れないと約束をしてくれ
わたしは恐ろしいのだ・・・・
そなたを失うことが・・・・この世の何よりも恐ろしい・・・・・・
この胸の疼きを・・・そなたの愛を求めて止まぬ乾いた砂漠のような心を
どうしたら伝えることができる?
どうしたら、そなたの全てを私につなぎとめることができる?
甘くただようそなたの吐息に
やすらかな微笑をたたえるまどろみの頬に
わたしは全てが捕らえられたまま、身動きすることもできぬ。
わが妃――――
もう、そう呼んでもよいのだな。
妃・・・わが妃・・・・わたしの―――そなたの全てはわたしのもの・・・・
だれにも渡さぬ。
そなたの全てはこのわたしのものなのだ・・・
キャロルよ・・・
今、何を夢見ている?
わたしのことを・・思ってくれているのか?
その幸せな笑みは、わたしへのものなのか?
そう信じてもよいのだな?
愛している・・・・愛しているキャロル―――
何度でも誓おう・・・
未来永劫、我が愛はそなただけのものだ・・・
最愛の妃のそなただけの―――
ああ・・・いつまでもこのまま・・この腕のなかに抱きしめていたい
そなたをこうして少しの隙間もないほどにずっといだきつづけたい・・・
今は太陽神のラーさえ疎ましい・・・
夜明けなど・・・永遠にこなければよいものを・・
我らを引き離すすべてが消えてなくなればどれほどよいか
「・・・・・ん・・・」
ゆるりと開く蒼き瞳・・・・
真っ直ぐにわたしを映し、柔らかに微笑む
「・・・・・もう・・・あさ・・・なの?」
そう言って身じろぐそなたがうらめしい・・・・
「――――――まだだ。日はまだ昇らぬ・・・」
力を込めて抱きしめなおす
まだ離したくない
もっと・・・・・もっとそなたが欲しい―――
背に回された小さな指先
わたしを狂わすそなたの喘ぎ
今一度そなたの愛が欲しい・・・・・
新たな夜明けの訪れる前に――――――
END
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