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王兄 ロディ・リード
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【エジプトの貴公子】
神々の悪戯か・・宇宙の神秘か・・
蜂蜜色を帯びた金髪の紳士が3000年の時を越え舞い降りたり。。。
彼の方の名は、ロディ・リード様。
尊きナイルの娘であるエジプト王妃キャロル様の実の兄君様にして、ファラオの義兄。
ときおりふらりとこちらの世においでになるようになって数年の月日が経ちました。
その英明なご才覚からファラオの信頼も厚く、エジプトにおいでの間だけではございますが、現在、エジプト王国の皇族として下エジプトにおける統治の一翼を担っておられます。

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「やあ、これはホルス将軍。おいででしたか。」
「・・・お寛ぎのところ失礼いたします。ロディ様」
「いや、いいよ。将軍もどう?ちょっと美味しいお茶が出来たんだ。今度のはかなりの自信作。」
エジプトではあまり見慣れない茶器が卓上に並べられている。
ロディは席につくようホルス将軍に手招きをした。
慣れた手つきで茶器を温め、湯を回し、茶葉をいれてまた湯を注ぐ。
不思議な作法ではあるが、彼の手によるとその動作もとても優美に見える。
「いえ・・わたくしはここで。」
「だめだよ。もう淹れたから飲んでくれないと。それに座らないならその手紙も受け取らないよ。」
「ロディ様・・困りましたな」
彼の気さくさは今に始まったことではないが、この柔らかな微笑みに誰もが心を許してしまう。
断るということが出来ない・・というか、させない雰囲気をもっている。
観念してすすめられた席に着き、琥珀色の清涼な飲み物に口をつけた。
「・・以前のものより苦味が少のうございますね。」
「そうだろうね。前より飲みやすい?」
「はい。・・あ、いえ・・・以前のお茶も美味しゅうございましたよ。」
「ははははっ 無理しなくてもいいよ。エジプトの人は甘い飲み物の方が好みなのは知ってるから。このあいだの『アールグレイ』はきつかっただろうに。」
そう言って、甘い焼き菓子を添えてすすめられた。
この「紅茶」という飲み物、ロディ様はことさらにこの琥珀色の飲み物を愛飲されている。
エジプトの酒や飲み物だけはどうしても口に合わなかったらしく、下エジプトに専用の茶畑をおつくりになり、今では日々改良を加えて数十種類もの茶葉を調合しているという凝りようだ。
ここを訪れるたび振舞われるのだが、見た目は同じ琥珀色なのに、毎回全く違う味がする。
「このお茶はねオレンジやベリーの風味をいれてあるから、かなり甘くフルーティに作ってあるんだ。将軍にお使いを頼んで悪いんだけど、帰りにまたキャロルに持って帰ってやってくれるかな。」
「はい。それはもちろん。王妃様もいつもロディ様のお作りになられた茶葉を楽しみにしておいででございますから。」
「キャロルはどっちかというと『ミルクティ派』だからなぁ。ミルクティ用の茶葉もつけておいてやるか。・・・で、そちらのご用件は?」
と、おもむろに片手でホルス将軍から書状を受け取り、紅茶を飲みながらハラリと文字に目を通し始めた。
ロディの青い目がゆっくりと文字を追う。
「・・・・王様の弟君が亡くなった? 」
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