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王兄 ロディ・リード
3
【御命(ぎょめい)】
『なにがなんでも 「義兄上(あにうえ)」 をテーベへお呼びするのだ。拒否された場合はどんな手段を用いても構わぬ。』
「・・・だとか。随分乱暴なご命令を下さいましたね。危うく簀巻きにされて連行されるところだった。・・一体どうなさったんです王様?」
ほぼ半月後―――
テーベの都に船で到着したロディは直ぐにファラオの居室に通された。
厳重な警備に固められた王宮の最奥
王の間はその警備の向こうに位置する。
豪奢でまばゆい黄金の扉を境に物々しい雰囲気が一変する。
居心地のよいゆったりとした空間に、品の良い調度品
ファラオの部屋として贅は凝らしているのだろうが、意外にそんなに仰々しくは感じない。
最初、古代の王様の部屋というものは、とにかく権威主義でもっとゴテゴテとしているものかと思っていたが、案外さっぱりとした感じだったのがとても印象的だった。
余計な物は置かないという点で、この竹を割ったかのような主の気質に似合っていているなと感じたものだ。
「はて・・・・どうされたとはこちらが聞きたいものだが・・。」
「はい?」
「・・まぁ良い。義兄上殿、遠路お疲れであられよう。まずはこちらにて一献くつろがれよ。」
カチャ・・・
近くにいたミヌーエが杯を満たす。
「どうもありがとう。」
カチン・・
「やはりこちらの酒は口には合われぬか?」
「いいえ、とても美味しいですよ。・・・ワインにしてくれたんですね。」
「ビールは苦手でいらっしゃった。」
「うん。実はそうなんだ。・・・お気遣いいたみいります。」
にっこり
「・・・・ミヌーエ将軍もいかがです?」
「職務中にございますれば。」
「そう。それは失礼。」
居室に控える端正な副官
ファラオの影のごとく付き従い、この場にも扉の側に控えていた。
それ以外はこの部屋に気配はない。

「お人払いしておられるなら内輪な話かな?」
「率直に・・・・お伺いしたい事があったのでな。」
「・・・・おや、お珍しい。僕をわざわざ呼んで聞きたいことだなんて。」
「そんなに奇異であろうか?」
「そりゃもう。貴方には正面きって嫌われまくっていますしね。(にこ)そばに僕がいるのは正直嫌なのでしょう?」
「・・確かに。義兄上殿がおられると妃があまりに落ち着かなくなる・・・気に食わないのはその点全てだ。」
「ふふっ だから余計に見せつけたくなるんだよね。(微笑)」
「・・・・・」
メンフィスは明らかに苦虫を噛んだようになった。
負けているつもりは全くないが、完全に勝てているとも言いきれないのが心底悔しいのだろう。
そんな顔を見ると、この高飛車な「弟」もちょっぴり可愛く思う。
嫌いとはっきり宣言していても、それは妹がらみの事だけだ。
下の弟をいじめて楽しむ・・・兄の特権
(なるほど・・こうやってライアン兄さんも僕をしょっちゅういじめていたわけだ。。)
ふと現代にいる、自分よりよほどメンフィスとそっくりな気性の黒髪の長兄を思い出してしまった。
「まあ、いいですよ。何をお聞きになりたいのですか?」
「・・・ずっとギザにおいでだったか?」
「はい?」
「ここ数日のうち・・・・下エジプトで何かアレに関する情報があったかを聞きたい。」
「『アレ』・・ねぇ。・・・具体的に言ってくれないと困るけど・・『15日前』あたりの事件のこと・・かな?」
「話が早くてありがたい。」
「かの『弟君』の動向についてということなら 『知らない』 としか言いようがないな。 聞くだけ無駄だよ。」
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