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王兄 ロディ・リード

【愛する者】




「メンフィス、メンフィス!ロディ兄さんが来てるんでしょう?」

表の扉を遠慮もなくドンドンと叩く音
お待ち下さい!と困惑した風の数人の護衛兵士とのやり取りまで賑やかに聞こえてくる。

「お通ししますか?ファラオ。」
「止めるだけ無駄であろう・・・」

ミヌーエが奥の扉を開けようとする前に王妃の強行突破は果たされていた。

バンッと勢いよく王の居室の扉が開け放たれる

「ずるいわよメンフィス!いっつも先に兄さんを独り占めするんだから!」
「ひ・・独り占め?」
       
いつも・・?! とんでもないぞ!
そなたにこやつを近づけたくないからいつも必死で引き離しているだけだ!
まさかそなた・・いつもそんな風に思っておったのか?!

「私の兄さんなんだから、私の方が1番なのっ!いくら兄弟が欲しいからって横取りはダメよ!」
「だ、誰が 『横取り』 だ!」

何故そうなる?!
出来ることならこんな裏表の激しい性悪策士と一緒にいること自体避けたいぐらいだというのに
『この』 義兄を、そなたとわたしで奪い合いだと?! 何だそれはっ!! 考えただけで身の毛がよだつ!
あまりに心外だ!誤解もはなはだしい!

「ぶっ・・・あ〜っはっはっはっはっっ!!!」

それを見ていたロディは盛大に噴出して大笑いをしていた。
普段静かに微笑みを浮かべるだけなのに、珍しく、本気で腹をよじって震えをこらえているありさまだ。
椅子の肘置きを叩いて息も苦しそうに笑いたおしている。

(こやつめ、心底爆笑しておるだろう!)

震える腹をおさえながら目に涙までよぎらせて
ようやくロディは声を出せるようになった。
でもまだ語尾が少しふるえている。

これはやはり・・・
“大好きな兄”を挟んで言い合う妹と義弟・・・の図・・ということになるのだろう・・・たぶん。。。
何も知らない者が傍からみれば・・確かに、実に心温まる兄弟愛の風景なのかもしれない・・・。(←ミヌーエ目線)

「まあまあキャロル、男同士の内緒話もあるんだよ。・・・・王様は実の弟君が急に亡くなられたところなんだ。“お寂しい気持ち” も分かってあげないとダメじゃないか。」
(寂しいだと!!なにをふざけたことを・・!!)
「・・・あ・・・」
(?!おいっ)
「たった一人の王様の兄弟だったからね。お悔やみ申し上げていたんだよ。」
「そうね・・・・・・・・そうだったわ・・・・・・・わたしこそ・・ご、ごめんなさいメンフィス・・わたしったら・・つい・・」
(・・・・違っ!!)
「でも確かにいつもキャロルのこと 『後回しばかり』 で悪かったね。ごめん。今日もね、 『王様が』 どうしても話したいことがあるからって離してくれなかったんだよ。。」
「まあメンフィスったら・・(←でもどことなく嬉しそう)」
「・・・・・・〜〜!!」(違うと言うにっ!!!)

「ね、王様。僕は義理の兄で血のつながりは確かにないけど、僕も王様のこと本当の兄弟のように思っているから。(にこっ)」

「・・・・・・・・(ひくっ)」

「こうして“頼りにしてくれて”とても嬉しいよ。(にっこり)」

(〜〜よ、よくも白々しく・・・っ この・・『ペテン師』が・・・・・!!!)

恐ろしく神々しい笑顔
慈悲深い優しさ満載・・・

後光まで見えそうなこの顔のまま平気で暗い陰謀も策略もやってのけるのだということを・・恐らくキャロルは兄のそんな一面など微塵も知らないのであろう。

(・・・言っても絶対に信じはしまい)

ロディの優しげな外見は、まこと天晴れ過ぎるほどなのだ。
キャロルに背を向けこちらに笑いかける笑顔のなんと『邪気のない』ことか・・・

いっそ、こっそり本音を・・・ニヤリと不敵な眼光を一瞬でも閃かせるくらいのほうがよほど自然だ。

僅かに引きつったメンフィスの顔を見ながらまたロディはにっこりと微笑んでみせた。
『ありえない笑顔』によけいに神の一族の底知れなさをメンフィスは感じる。

「・・・・さて、じゃあ王様、『ごほうび』ということで妹と水入らずの時間をもらってもいいかな?」
(っ!)
「???なあに?兄さん、ご褒美って??」

「下エジプトでがんばって 『王様に貢献した』 っていうことでだよ。」









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