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王兄 ロディ・リード

【困惑】




「???なあに?兄さん、ご褒美って??」
「下エジプトでがんばって『王様に貢献した』っていうことでだよ。」
「!」

ぽふっとキャロルの頭上にロディは手を載せた。
それが彼の兄妹の習慣だったのか、キャロルは子供のようにそれは嬉しそうにはしゃいでいる。

「ああ、それならね、わたしもう〜んとお礼しなくっちゃって思っていたの。大臣たちからも聞いているのよ。兄さんのおかげで今年になって下エジプトの経済が目覚しくよくなったって。」
「・・・・ま、ね。(微笑&抱擁)・・・・ちょっとぐらい二人で散歩してきてもいいですよね王様?(キャロルの髪をなでなで)」

《せめてそのくらいは “ご褒美” で許してくれてもいいんじゃない? でなきゃ、本気でこの娘、現代に連れて帰っちゃおうかな〜〜》
・・・言葉の端々にそんなロディの裏の意図がありありとメンフィスには伝わる。

「(イラッ) ・・・・・この庭内だけならよかろう。・・だが妃の護衛ははずせぬ。 ミヌーエ、キャロルに付いておれ。」
「は・・。」
「・・・・・夕餉には戻ってまいられよ。食事でも・・・ご一緒いたそう。」

物凄い忍耐の譲歩だ。
普段なら、王にこんなセリフは絶対にありえない。
兄とはいえ、ロディも王以外の男に違いない。それを僅かな時間でも王妃と一緒にいることを許し、また宴でもないのに国王夫妻の夕餉の場(別名:愛の巣)に同席させるなど・・・。
《・・・・このメンフィス様から"譲歩"を引き出すとは・・・全くもって侮れぬ御仁だ。。。。》

だがそれを何だと思ったのか・・・・・・キャロルはと言うと、それはそれは嬉しそうにメンフィスとロディを交互に見上げ、そしてキラキラとその瞳を輝かせたのだ。

《よかったわ!ロディ兄さんとメンフィスって、このごろとっても仲が良くていい感じ♪ ライアン兄さんの時はいきなりの大喧嘩で本気の殴り合いだし、相性最悪で本当に困っちゃったけど・・・。ロディ兄さんとは普段でもお互いに手紙のやりとりも頻繁にしてるみたいだし。すっごく嬉しいわ♪今夜のお夕食は是非とも楽しい 『家族団欒』 にしなくっちゃ♪》

「それなら・・・そうだわ!(パンッ) じゃあ、わたし二人にとびっきりのご馳走を作ってあげる!♪♪」

「な・・! ・・・・えっ!ええぇぇぇぇぇぇっっ!????」
「何ぃっ!」

突拍子もない王妃の主張
突然の宣言に二人の貴人は同時に仰天の声を上げてしまった。
キャロルはというと、そんな二人の絶句をものともせず、とってもよいアイディアが浮かんだとすっかりその気になってしまい、

「これからなら3時間程もあるからお夕食までには充分間に合うわね♪よーし、『フルコース』で張り切っちゃう♪」

・・・・と、すたこらさっさと腕をまくり厨房めがけて走りだしてしまったのだ。。。。


(とびっきり・・・?!)
(誰が何作るって!???)


「おい・・・・・キャロル・・・」
「・・・・・・・・・えーと。。。もう行っちゃった・・・か・・・・どう・・しようか・・ねぇ(^^ゞ」
「・・・・・・・」

後に残された二人は、急遽想像もしていなかった避けられない危機の到来に息を呑む。
しばし完全フリーズ状態に陥ったまま、ぎこちなく思わず互いの顔を見合わせた。

(一体何を作るつもりなのだろう・・・・)

いや、何を作ったとしても・・・彼女の手にかかればとてもその原型の料理とは似てもにつかぬ凄いものになることを良く知っていた。
計らずとも・・・・幸か不幸か・・二人とも・・・。

(しかも・・・『フルコース』・・・・って・・・ )

「・・・・義兄上殿への歓迎の料理だ。・・・存分にご堪能されよ。」
「い、いやだなぁ・・・。王様の独占欲はすっごく良く知ってるから、そんなことして後で怨まれると困るじゃないか。」
「遠慮は無用。いやなに、せっかくの妃の気持ちだ。久方ぶりでもあろうから夕餉も兄妹水入らずで2人で召し上がってはいかがかな。」
「・・・・・嬉しすぎるお申し出だけど、僕とて命は惜しいんだよ。」
「妃が何かを盛るとでも?そなたではあるまいし。・・・安心いたせ。全て食べても絶対に死にはせぬ。・・・・・・・半日倒れるだけだ。」
「毎日胃袋鍛えてる王様とは根本的に違うんだよ!2日は確実に起き上がれなくなる!」
「兄だろう。気合で食せ!」
「それができるのはうちのライアン兄さんと君ぐらいなんだよ!」

王が倒れたら国の存続に影響するだの、わざわざ来たのに王弟の葬儀に参列できないだの、食材が勿体無いだの、厨房が破壊されるだの・・果ては某所にこもってそこで互いの顔を見るのがイヤだの、薬で一気に押し流せばいい(?!)だの・・・・だんだんわけの分からない低レベルな言い争いになり、とてもこの両者のする会話とは思えない有様になっていった。

内容はともかく、ミヌーエの目からみれば、この二人、これほど息のあった兄弟はないと思う。
こうして忌憚なく言い合える事自体、本当の肉親以上に兄弟らしいとつくづく思うが、知らぬは本人達ばかりなのだろう。

「・・・・メンフィス様、ロディ様」
「なんだミヌーエ!口出しするな」
「申し訳ございません。・・ですが・・・どう召し上がるかより・・・・・まずは厨房の王妃様をお二人で阻止されてみては?」
「!」「!」
「ロディ様は料理も得意でいらっしゃるとホルス将軍より伺っております。・・・ロディ様がお手伝いと称して王妃様のお手を止められれば、それなりに召し上がる時点での被害・・・・・・いえ、『影響』 は少なくなるかと存じますが・・・」
「・・・!」
「・・・なるほど。そうだね。」









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